荷物より先に、自分が壊れたら

配送の仕事を8年やって、いちばん怖かったのは事故でも荷物の破損でもなく、「自分が動けなくなること」でした。

雨の日の階段で荷物ごと滑ったとき、とっさに荷物をかばって腰から落ちました。幸いあざで済みましたが、あのとき骨折していたら、翌日から収入はゼロです。会社員なら労災保険が治療費と休業の一部を支えてくれます。個人事業のドライバーには、それが自動ではついてきません。

先にお伝えします。黒ナンバーの届出をしている個人のドライバーは、労災保険に自分の意思で入れます。「特別加入」という制度です。月々の負担は、いちばん安い設定なら年間14,047円。この記事では、入り方・お金・もらえる補償を順に整理します。

ケガで収入が止まる前に知っておく特別加入

労災保険は「労働者以外」も入れる場合があります

労災保険は本来、雇われて働く人のための制度です。ただし、働き方の実態が労働者に近い一定の自営業者には、任意で入ることを認めています。これが特別加入です。

軽貨物のドライバーは、厚生労働省の資料で「一人親方その他の自営業者」の①「自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業」に含まれています。具体的には、貨物軽自動車運送事業の届出(いわゆる黒ナンバーの届出)を行った人が対象として明記されています。バイク便に持ち込みで専属する二輪の人、原付や自転車で配達する人も対象です。

従業員を使わず一人で回している人が対象ですが、労働者を使う日の合計が年間100日未満なら、一人親方等として加入できます。

入り口は「特別加入団体」です

特別加入は、労働基準監督署に個人で直接申し込む形ではありません。都道府県労働局長の承認を受けた「特別加入団体」に申し込み、団体を通じて加入します。運送業向けの団体が各地にあり、お近くの団体は都道府県労働局または労働基準監督署で確認できます。

特別加入までの流れ

申し込みのときに決めるのが「給付基礎日額」です。3,500円から25,000円までの中から自分で選びます。この日額が、保険料と、ケガをしたときにもらえる額の両方の物差しになります。

保険料は「日額×365日×11/1000」

自動車を使う貨物運送の保険料率は1000分の11です。年間保険料は、選んだ給付基礎日額×365日×11/1000で決まります。

給付基礎日額と年間保険料の早見表

日額3,500円なら年間14,047円。月あたり1,200円弱です。日額10,000円なら年間40,150円になります。これとは別に、特別加入団体の入会金・年会費がかかります。金額は団体ごとに違うので、申し込み前に確認してください。

日額を安くすれば保険料は下がりますが、休業したときにもらえる額も同じ物差しで下がります。「1日働けないと、いくら困るか」から逆算して選ぶのが実務的です。

もらえる補償は「治療費」と「休業中のお金」が柱

仕事中や通勤中のケガ・病気が対象です。柱は次の2つです。

  • 治療費(療養給付):労災病院や労災指定病院での必要な治療が無料で受けられます。給付基礎日額とは関係ありません
  • 休業のお金(休業給付+休業特別支給金):療養のため働けない日が4日以上続いた場合、休業4日目から、1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給され、あわせて20%相当額の特別支給金が出ます。合計で日額の80%相当です

たとえば日額10,000円で20日間休業した場合、厚労省の資料の例では、休業給付が10万2千円、特別支給金が3万4千円、合計13万6千円です(待期3日を除く17日分)。

このほか、障害が残った場合の障害給付、亡くなった場合の遺族給付・葬祭料などもあります。

特別加入でもらえる主な補償

対象になる場面・ならない場面

補償の対象は、どんな場面のケガでもよいわけではありません。個人貨物運送業者の場合、対象として挙げられているのは次の場面です。

  • 届出した事業の範囲内で、事業用の車を運転する作業(運転補助作業を含む)
  • 貨物の積み卸し作業と、これらに直接附帯する行為
  • 台風・火災などの突発事故による予定外の緊急出動
  • 通勤

裏を返すと、プライベートで自家用車を運転している時間や、事業と関係のない作業は対象外です。また、加入前からあった病気や、故意・重大な過失による災害は給付されない、または制限されることがあります。

なお、金額や区分は令和7年8月1日現在の厚生労働省資料によるものです。制度の細かい当てはめや最新の条件は、特別加入団体か労働局・労働基準監督署で確認してください。この記事は制度の枠組みを整理したもので、個別の加入判断に代わるものではありません。

コマチWEBサポートは保険の代理店ではないので、加入の窓口にはなれません。ただ、同じ個人事業として「ケガで止まる怖さ」を減らす情報は、これからも現場の言葉で整理していきます。

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出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり〈一人親方その他の自営業者用〉」

💬 あきらの一言

配送をやっていた頃、同業の先輩が配達中の転倒で1か月近く休んだことがありました。治療費よりこたえるのは、その間の売上がまるごと消えることです。車のリース代と駐車場代は、休んでいても毎月出ていきます。個人でやっていると「自分は大丈夫」を前提に予定を組みがちですが、月1,200円弱で「動けない月」の底が入るなら、経費としては安いほうだと思います。まずはお近くの特別加入団体を調べて、年会費と合わせた総額を見るところから始めてみてください。

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