AIが「毎回説明が必要な新人さん」で止まっていませんか
AIを仕事に使い始めた方から、よくこんな声を聞きます。「便利なんだけど、毎回イチから状況を説明している」「経理の相談をしていたのに、いつの間にか別の話と混ざる」「答えが一般論ばかりで、うちの事情を踏まえてくれない」。
私も最初はそうでした。いまは違います。結論から言うと、AIをひとりの助手として使うのをやめて、「小さな会社」として組織化したことで、毎回の説明がほぼ消えました。私はひとり会社の経営者ですが、AIの側には営業・経理・コンテンツ制作・開発といった「部門」があり、それぞれが自分の担当ルールを覚えた状態で立ち上がります。
この記事では、その組織化を実際にどう作り、数ヶ月回して何がうまくいき、どこで失敗したかをお話しします。特別なプログラミングの知識は要りません。私自身、軽貨物配送を8年やってきた非エンジニアです。

仕組みの土台:AIに「まとめ役」と「部門」を持たせる
使っているのはClaude Code(Anthropic社のAIツール)です。チャット型のAIと違い、パソコンの中のファイルを直接読み書きできるのが特徴で、「フォルダに置いたルールブックを最初に自動で読む」という性質があります。
この性質を使って、次の構成にしています。
- まとめ役(PM):窓口になるAI。仕事を受け取り、どの部門に振るかを判断する
- 部門エージェント:営業、経理、コンテンツ制作など、業務ごとの担当AI。まとめ役が仕事を振ると、その部門のルールだけを読み込んで動く
- ルールブック(CLAUDE.mdというテキストファイル):会社全体の決まりごとを書いたメモ。「送信や公開は必ず私の承認を取る」「顧客情報をファイルに書かない」といった絶対ルールをここに置く

人間の会社と同じで、全員が全部のマニュアルを覚える必要はありません。経理担当は経理のルールだけ、営業担当は営業のルールだけを読む。これだけで「話が混ざる」「一般論しか返らない」がほぼなくなります。
失敗談:ルールブックを1枚に書きすぎて、逆に守られなくなった
最初の失敗はここでした。便利さに気づくと、ルールブックになんでも書き足したくなります。営業の手順、経理の締め日、ブログの文体、過去の反省……。数ヶ月でファイルは肥大化し、あるとき気づきました。ルールが増えるほど、守られる率が下がっているのです。
人間の新入社員に300ページのマニュアルを初日に渡すのと同じで、AIも「大事なことが埋もれる」と取りこぼします。そこで思い切って3層に分けました。
- 判断を変えるルールだけを全体ルールブックに残す(安全・承認・役割分担)
- 作業手順は業務ごとの手順書ファイルに分離し、必要なときだけ読ませる
- 日々の記録は引き継ぎメモに流す
分けた後は、絶対に守ってほしい安全ルールの遵守が目に見えて安定しました。ルールブックは「厚くするほど安心」ではなく「薄くするほど効く」。これが数ヶ月回して得た一番の教訓です。
引き継ぎメモ:AIの「記憶」は仕組みで作る
AIとの作業は、セッション(会話のひとかたまり)が変わると記憶がリセットされます。ここを放置すると「前回どこまでやったっけ」を毎回人間が説明するはめになります。
対策はシンプルで、人間の会社の引き継ぎと同じことをさせます。作業の終わりに、日付・やったこと・次にやることをメモファイルへ書き足させる。次のセッションはまずそのメモを読んでから始める。これだけで「続きからお願い」が通じるようになります。

コツは、長文の感想ではなく短い事実だけを書かせることです。「頑張りました」ではなく「営業リストの下書き12件作成、送信は未実施、次回は宛名の確認から」。次に読む側(人間でもAIでも)が迷わない粒度に揃えます。
相互レビュー:AIの成果物は「別のAI」に見せる
もうひとつ効いているのが、AI同士の相互レビューです。私の環境では、実装が得意なAIと運用管理が得意なAIの2系統を使っていて、顧客に出すもの・外部に公開するものは、作ったAIとは別のAIに必ずレビューさせています。
同じAIに「自分の成果物を見直して」と頼むと、どうしても甘くなります。別の系統のAIは前提を共有していないぶん、「この表現は誇大では」「この数字の根拠は」と容赦なく指摘してきます。人間の会社でいうダブルチェックを、AI同士でやらせるイメージです。
これで完璧になるわけではありませんが、私のところでは公開前の誤字・事実誤認・言い過ぎ表現の検出率が体感で大きく上がりました。
安全装置:最後のボタンは必ず人間が押す
最後に、いちばん大事な話です。組織化して任せる範囲が広がるほど、「AIにやらせないこと」を先に決めておく必要があります。私の全体ルールブックの先頭には、こう書いてあります。
- メール送信・SNS投稿・サイト公開・金額の決定は、必ず私の承認後に実行する(AIは下書きまで)
- 顧客情報・パスワード類をファイルに書かない
- ファイルの削除は事前に確認を取る

AIは優秀ですが、間違えます。間違えたときに取り返しがつく設計にしておけば、安心して任せる範囲を広げられます。逆にここを決めずに自動化を進めると、たった一度の誤送信が信頼を壊します。「最後のボタンは人間」。この一線だけは、組織がどれだけ育っても変えないつもりです。
まとめ:フォルダとメモだけで、今日から始められます
- AIを「会社」として組織化すると、毎回の状況説明が消え、回答が自分の事業に即したものになる
- ルールブックは薄く。判断を変えるルールだけ残し、手順と記録は分離する
- 引き継ぎメモとAI同士の相互レビューで、品質と継続性を仕組みにする
- 送信・公開・削除・お金は人間の承認制。ここだけは自動化しない
必要なのは、フォルダ分けとテキストのメモだけ。最初は部門2つ(例:書類仕事の部門と、発信の部門)で十分です。
「うちの業種ならどう分ければいい?」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
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💬 あきらの一言
配送をやっていた頃、回っている会社は朝の時点で「誰が何を運ぶか」が決まっていました。AIも同じで、担当と辞令を決めた途端に働きが変わります。正直、最初はひとりの事業で「会社ごっこ」なんて大げさだと思っていました。でも毎回の説明が消えて、朝には下書きが揃うようになると、もう前には戻れません。完璧な組織図はいりません。まず部署2つ、今日のメモ1枚からで十分です。
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