「点呼の記録、これで大丈夫でしょうか」から始まりました

「点呼はLINEで送ってもらって、日報は紙なんです。これ、ちゃんとした記録になってますか」

軽貨物の配送を8年やっていると、同じ業界の方からこういう相談を受けることがあります。委託ドライバーを抱える小さな運送会社ほど、記録の残し方に自信を持てずにいます。

市販の点呼アプリをいくつか見てみたのですが、緑ナンバーのトラック事業者向けに作られたものが多く、私が見た範囲では機能も価格も軽貨物の規模に合いませんでした。それなら自分で作ってみようと思ったのが始まりです。私はエンジニアではありません。プログラミングを学校で習ったこともありません。

結論を先に書きます。非エンジニアでも、自分がよく知っている業務のアプリなら形にできます。ただし数日でできる話ではなく、私の場合は動くところまで約3ヶ月かかりました。そして作ってみると、自分で作っていい部分と、手を出さないほうがいい部分がはっきり分かれました。

軽貨物の運送事業者がノートパソコンで自分の業務アプリを見ている

なぜ既製品を買わずに自分で作ったのか

既製品と自作の向き不向き

既製品が悪いわけではありません。むしろ、業務が一般的なものほど既製品のほうが確実です。会計や給与計算を自作する理由はほとんどありません。

それでも自作を選んだ理由は3つあります。

1つ目は、軽貨物の委託という働き方に合う作りの製品が、私には見つけにくかったことです。委託ドライバーは事務所に寄らず自宅から直行することが多く、対面で点呼を受ける前提の運用とは相性がよくありません。

2つ目は、機能の大半を使わないのに費用がかかることです。車両管理や運行指示まで含んだ製品は、数台で回している会社には過剰でした。

3つ目は、自分が業務の中身を一番よく知っていたことです。点呼で何を確認するのか、日報のどこが面倒なのかを、8年間毎日やってきました。仕様を人に説明する手間がゼロというのは、思っていた以上に大きな利点でした。

実際にかかった期間と、中身の大きさ

3ヶ月の開発の流れ

最初の土台を作ったのが5月の頭で、実際の会社で試してもらえる状態になったのが7月です。間の3ヶ月は、毎日フルタイムで開発していたわけではありません。配送の仕事と、ホームページ制作の仕事の合間に進めました。

中身の規模を数えてみると、プログラムのファイルが350本ほど、データベースの構造を変更した回数が16回、動作を自動で確認する検査が約690本ありました。この検査というのは、「点呼の記録を保存したら、ちゃんと保存されているか」を人の代わりに機械が確かめてくれる仕組みです。手で全部確認していたら、この規模は一人では回りません。

期間の内訳はだいたいこうです。最初の1ヶ月で画面と保存の土台、そしてLINEとのやりとりまで。次に面談の予約まわり。最後の1ヶ月で法令に関わる記録と、実際に使ってもらうための細かい調整でした。

体感として一番時間を取られたのは、機能を作ることではなく、間違った使われ方をしても壊れないようにする部分でした。日付を未来にして提出できてしまう、前回の内容をそのまま写して中身を見ないまま出せてしまう。こういう「動くけれど記録として意味がなくなる」穴を塞ぐ作業に、後半の時間の多くを使いました。

AIに任せた部分と、自分で決めた部分

AIの開発ツールに書いてもらったのは、プログラムの文章そのものです。「点呼の前と後で入力する項目を分けて、記録を1年間残せるようにしたい」と日本語で伝えると、その通りに動く形を作ってくれます。文法の細かい決まりを覚える必要はありませんでした。

一方で、AIに任せなかったことがあります。

何を作るかの判断です。「アルコール検知器の写真も残したい」「深夜勤務で日付が変わる人はどう扱うか」といった決めごとは、現場を知らないと決められません。AIは指示された形は作りますが、業務としてどれが正しいかは教えてくれません。

外に出す判断です。実際の会社のデータが入る場所へ反映する作業は、必ず自分で内容を確認してから行うようにしました。ここを自動にすると、間違いがそのまま本番に流れます。

個人情報の置き場所です。ドライバーの名前や連絡先をどこに保存するか、誰が見られるようにするかは、便利さより安全を優先して自分で決めました。

この線引きは、配送の現場感覚とよく似ています。新しく入った人に荷物の積み方は任せられても、鍵の管理は任せない。それと同じ考え方です。

作ってみて分かった「自作の限界」

自作の前に確認したいこと

正直に書くと、自作には向かない領域があります。

認証まわりは自作しないほうが安全です。 誰がログインできるかを判定する仕組みは、自分で作ると穴が開きやすい部分です。私の場合は、既に世の中で使われている認証サービスに任せる形にしました。ここを自作する判断だけは、しないほうがいいと考えています。

法令の解釈は自分で確定させないほうがいいです。 記録の保存期間や必要な項目は、公的な資料で確認したうえで作りました。それでも「これで完全に対応済みです」と言い切ることはしていません。制度は更新されますし、会社ごとに条件も変わります。

作った後の面倒を見続ける必要があります。 アプリは作って終わりではなく、動き続けている間ずっと誰かが見る必要があります。自分が倒れたときにどうするかは、今も課題として残っています。

現在の状況も正直に書いておきます。このアプリは今、知り合いの運送会社さんに実際の業務で使ってもらっている段階です。まだ試用の位置づけで、これから改善を重ねていくところです。

これから自作を考える人が最初に決めること

自分で作るかどうかを考えている方には、着手前に3つを決めることをおすすめします。

1つ目は、その業務を自分が説明できるかです。紙に手順を書き出せない業務は、AIにも伝えられません。逆に説明できるなら、作れる可能性は高いです。

2つ目は、個人情報を扱うかどうかです。名前や連絡先、写真を保存するなら、置き場所と見せる相手の設計が必要になります。ここに自信がないうちは、個人情報を持たない範囲から始めるほうが安全です。

3つ目は、やめる条件です。何ヶ月かけても形にならなかったら既製品に戻る、という線を先に引いておくと、後で判断しやすくなります。私も「合う製品が見つかったら乗り換える」つもりで始めました。

軽貨物の現場で言えば、初めてのルートをいきなり全部回ろうとせず、まず半分だけ試すのに近い感覚です。小さく作って、続けられそうなら広げる。この順番が、一人で進めるときは一番倒れにくいと感じています。

法令や制度の内容は更新される場合があります。実際の運用を決めるときは、国土交通省や各運輸支局の最新の案内を必ず確認してください。

参考資料:

コマチWEBサポートでは、業務の中でどこをAIに任せられるか、どこは既製品を使うべきかの切り分けからご相談を受けています。自作すべきか迷っている段階でも、業務の整理からお手伝いできます。

  • コマチWEBサポートのHPでサブスクプランを見る: https://komachi-dx.com
  • LINE公式で無料相談: https://line.me/R/ti/p/@633tppon
  • メール相談: [email protected]

💬 あきらの一言

正直に言うと、作り始めたときは「1ヶ月あればできるだろう」と思っていました。実際は3ヶ月かかって、しかも一番時間を取られたのは新しい機能ではなく、間違った使い方をされても記録が壊れないようにする部分でした。配送でも、荷物を積むより「積み忘れをどう防ぐか」を考える時間のほうが長かったのを思い出します。自分で作れる時代になったのは確かですが、作れることと任せていいことは別物だと、作ってみて改めて感じています。

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