
「AIに同じことを毎回説明するのに、もう疲れました」
コマチに相談に来られる中小企業の経営者からよく出る言葉です。ChatGPTを使い始めたものの、毎回「うちは軽貨物業で」「単価はこの表で」「お客様の名前は呼び捨てで書かないで」と前置きを書く。気が付くと、AIに頼む方が手で書くより時間がかかっている——。
そんな悩みを1ファイルで解決する仕組みが、CLAUDE.md と Agents.md です。
本記事では、軽貨物配送業を8年やってきた現場感で、「業務マニュアル」の例えに置き換えて解説します。加えて、コマチで実際に使っている CLAUDE.md の中身も一部公開します。
CLAUDE.md/Agents.md は「AI用の業務マニュアル」
ひとことで言うと、CLAUDE.md / Agents.md = AIに渡しておく業務マニュアルです。
新しいスタッフが入社する時を想像してみてください。
- 業務範囲(どこまでやる仕事か)
- 絶対やってはいけないこと(致命傷ルール)
- 暗黙のルール(うちの作法)
- 困った時の連絡先
これを1冊にまとめた新人向けマニュアル、どの会社にも1つはあるはずです。それをAI用に書いたものが CLAUDE.md / Agents.md です。
| 名前 | 主な使い道 | 覚え方 |
|---|---|---|
| CLAUDE.md | Anthropic社のClaudeというAIに作法を渡す | クロードのマニュアル |
| Agents.md | Codex(OpenAI)など他のAIにも作法を渡す | エージェント全般のマニュアル |
書き方はほぼ同じです。どちらか・あるいは両方を同じ内容で置いておけば、対応AI同士で同じ作法に沿って動きやすくなります。
業務マニュアルと比べると分かりやすい
| 項目 | 紙の業務マニュアル | CLAUDE.md / Agents.md |
|---|---|---|
| 配り方 | 新人入社時に手渡し | フォルダにファイル1個置くだけ |
| 読む人 | 新人スタッフ | AI(毎回必ず最初に読んでくれる) |
| 更新コスト | 印刷し直し・差し替え | テキストファイル1行直すだけ |
| 守ってもらう方法 | 教育・OJT・上司の指導 | ファイルに書いてあるから自動で守る |
| たとえると | 入社初日のオリエン資料 | 毎日入社初日のオリエンを受け直してくれるAI |
つまり、「うちの作法」を1回書いておけば、繰り返しの依頼でも作法のブレが出にくくなる仕組みです。
コマチで実際に使っている CLAUDE.md の中身

ここでコマチの実物を一部お見せします。トップに置いてあるのは、こんな項目です。
1. 絶対ライン(致命傷防止・4項目)
「やったら会社が潰れるレベルの禁止事項」です。①個人情報・決済情報をコードに書かない/②機密を扱うアプリには必ず認証/③APIキーは環境変数/④機密リポジトリはPrivate——軽貨物でいう「車検切れの車を出さない・無理な工期で事故を起こさない」と同じ層。これに触れそうな作業が来たらAIは必ず手を止めて確認するルールです。
2. 推奨ライン(外れる時は一声かける)
ホスティングはCloudflare推奨・認証はCloudflare Access推奨など、「禁止ではないが、外れる時は社長に確認」の項目。軽貨物でいう「いつもの取引先優先・新規業者なら社長に一声」と同じ構造です。
3. 困ったら・対応できない時
「絶対ラインを守って実現する方法が見つからない」「漏れたら致命傷の領域」「独自セキュリティ実装が必要」——この3条件のいずれかなら、「無理せずエンジニアに相談を」と返すルール。AIが「分かりません」と言える状態を作るのが、安全運用の鍵です。
4. 動き方(PMモード)
重い作業は専門エージェントに振る・重要情報はメモに記録・迷ったら必ず社長に確認——軽貨物でいう運行管理者(社内で配車・安全・教育の交通整理をする人)の動き方マニュアルそのものです。
現場での3つの使い方
例1:軽貨物の「ドライバー手順書」
- これまで:新人が入る度、ベテランが助手席で1週間OJT。教える人によって手順が微妙にズレる
- 置き換え後:「集荷時の挨拶・荷物の積み方・事故時の連絡フロー・写真撮影のタイミング」を全てファイル化。新人スタッフ向けにもAI(チャットbot)向けにも、同じ1ファイルが使える
例2:整体院の「予約対応マニュアル」
- これまで:受付スタッフが交代すると「初回○分・2回目以降○分」「キャンセル料の例外」「ご家族割引」などが伝わらず顧客クレーム発生
- 置き換え後:例外ルール含めて全てファイル化。LINE予約bot・電話応答メモ・スタッフ研修資料、3つの用途を1ファイルで運用
例3:建設業の「見積もり計算ルール」
- これまで:単価表はExcel、夜間割増は社長の頭の中、特定取引先の特別単価はベテランしか知らない
- 置き換え後:単価表・割増ルール・取引先別例外・端数処理・税率切替を全て明文化。AIが見積書ドラフトを作る時に必ず参照する。新人事務員のチェックリストにもなる
ポイントは、1ファイル作るだけでAI教育・新人教育・業務マニュアル整備が同時に進むことです。
紙のマニュアルとの決定的な違い

「紙でマニュアル作ったことあるけど、誰も読まなかった」という社長の声をよく聞きます。CLAUDE.md / Agents.md は、紙との決定的な違いが3つあります。
違い1:必ず読まれる
紙マニュアルは新人スタッフが「読んだフリ」をすることもあります。CLAUDE.md は、AIが作業開始前に原則として参照する仕組みです。「読んでない」が原理的に起きにくい設計です。
違い2:更新が即反映される
紙マニュアルの改訂は、印刷・配布・差し替え・古い版の回収——半日仕事です。CLAUDE.md はテキストファイル1行直して保存すれば、次の依頼から即反映されます。
違い3:書く過程で会社が強くなる
副産物として大きいのがこれです。CLAUDE.md を書くプロセスは社長の頭の中の暗黙ルールを文字にする作業そのもの。書き終わる頃には、スタッフに任せる範囲が明確になり、採用時の説明資料が揃い、業務引き継ぎが体感で速くなります(効果は会社の規模・整備状況により異なります)。「AIのために書いたら、会社の財産になった」というのが現場で見てきた感想です。
書く時のコツ7つ
コマチが2026年に運用して見えた、書く時のコツを7つお伝えします。
- 200行以内を目安に(A4で3〜4枚以内・超えそうなら別ファイル化を検討。コマチでは120行を目安に切り出し)。長すぎるとAIも人間も読み流す
- 絶対NGを最初に書く。後ろの項目ほど忘れられる
- 例外を必ず書く。「基本○○、ただし△△は××」の例外こそ現場のクセ
- 更新責任者を1人決める。複数人で直すと矛盾する
- 迷ったら「社長に確認」と書く。AIが「分かりません」と返せる状態が安全運用の鍵
- 参照先テーブルを作る。単価表・取引先リストは別ファイルに逃がして本体を薄く
- 月1回・15分の見直しをカレンダーに固定。会社の作法は変わる
「うちにも書いた方がいい?」セルフチェック

3つ以上当てはまったら、CLAUDE.md / Agents.md を作るタイミングです。
- [ ] 同じ業務をAIに頼む時、毎回同じ前置きを書いている
- [ ] スタッフによって対応にバラつきが出ている(属人化)
- [ ] 新人が入ると「うちの作法」を教えるのに毎回1週間以上かかる
- [ ] 業務マニュアル・単価表・FAQが紙やExcelで点在している
- [ ] 「これは社長に聞かないと分からない」例外ルールが10個以上ある
- [ ] AIを業務に組み込みたいが、何から始めればいいか迷っている
- [ ] 自社の業務を自分の言葉で説明できる(社長または現場リーダー)
導入で気をつけたい3つの落とし穴
落とし穴1:書きすぎて誰も読まなくなる
A4で10枚を超えるとAIも人間も読み流します。「長くなったら別ファイルに逃がす」が徹底ルール(コマチの運用ライン=120行は前段でお伝えしたとおりです)。
落とし穴2:書いた日に満足して、更新しない
半年放置すると書かれた内容と実態がズレ、AIが古いルールで動き出します。月1回15分の見直しを予定化するだけで生存率が大きく変わります。
落とし穴3:機密情報を書き込む
一番大事な点です。顧客名・電話番号・口座番号・パスワードは絶対に書かない。CLAUDE.md / Agents.md はファイルとして残るため、共有先によっては漏洩リスクが出ます。書くのは「ルール・作法・参照先テーブル」までに留め、具体データは別ファイル(暗号化・アクセス制限付き)に分けます。
まとめ:1ファイルで「うちの作法」がAIに伝わる
CLAUDE.md / Agents.md = AIに渡す業務マニュアル、これだけ覚えてください。
AIに毎回前置きを書く = 入社初日のスタッフに毎日同じ説明をする CLAUDE.md / Agents.md を置く = マニュアル1冊を社内に常設する
外注ITの数十〜数百万円システムと比べ、自社で・即座に・テキストファイル1個で・育てながら使えるのが強みです。ただし「200行以内・絶対NGを最初に・例外を書く・月1見直し・機密情報は書かない」の運用がセットで必要。現場を知っている社長や担当が主役の仕事です。
コマチWEBサポートでできること
コマチでは、軽貨物配送業を8年やってきた現場感と、Claude Code・Codex等のAIツール運用ノウハウを組み合わせて、中小企業の経営者向けにCLAUDE.md / Agents.md 作成の伴走サポートを月3,300円(税込)から提供しています。
「うちの業務、何から書き出せばいい?」と気軽に診断したい方は、LINEで無料相談いただけます。業務パターンを3つ伺うだけで、業種別の書き出しテンプレと優先順位をお伝えします(想定ケースベースの提案であり、効果は業種・規模により異なります)。
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あきらの一言
軽貨物の現場では、ベテランと新人の差は「ルールブックを頭に入れているかどうか」でした。AIも同じです。素のままだと毎日初日の新人と変わりません。けれど、CLAUDE.md / Agents.md という形で「うちの作法」を1ファイルで渡してあげると、急に頼れる存在になります。難しいことは要りません。「社長の頭の中だけにある暗黙ルール、1ページでいいから書き出してみる」、その感覚から始めてもらえれば十分です。書いた瞬間に、会社の財産が1つ増えています。
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